【寄稿】延岡の居場所作り「ドイツフェスタ」に励む延岡盛り上げ隊隊長・岩本武士さん

7月某日、かがり火WEB編集部に1通のメッセージが届いた。

「私の友人に宮崎県延岡市を盛り上げようと奮闘している名古屋大学の学生がいます。その友人はとても地元愛が強く、8月18日にドイツフェスタを開催する予定です。しかしまだ認知度が高くないため、かがり火WEBさんで取り上げていただければと思い、メッセージにてご連絡させていただきました」

メッセージの主は、長崎大学に通う東叶子さん。ぜひ力になりたいと思ったけれど、いまの「かがり火WEB」には取材に出向くほどの余力がない。雑誌『かがり火』の編集会議にかける手もあるけれど、それではドイツフェスタの開催に間に合わない。

そこで思いついたのが、メッセージをくださった東さんに取材をお願いし、寄稿していただくというアイデアである。東さんは快く応じてくださり、8月18日のドイツフェスタに、こうしてなんとか間に合った。

東さんの思いの込もった寄稿文をぜひ読んでいただきたい。そして「ドイツフェスタin延岡」にも足を運んでいただけたら幸いである。

(かがり火WEB編集部)

【寄稿】長崎大学4年・東叶子

「地域活性化」という言葉をよく聞くようになった。地域活性化とは、一般的に地方において定住を促進する政策提言や地域経済の発展のことをいう。しかし、急激に人口減少が進む中で、人口の取り合いや一時的な経済循環は「持続可能な発展」と呼べるのだろうか。

また、人口減少とともに地方における若者の流出も激しい。宮崎県延岡市は九州内で2番目に人口減少率が高い。毎年1500人程が延岡市から他の町へと出ているという。また、後継者不足も問題となっており、多くの会社や技術の存続が危ぶまれている。

そんな中、今年8月18日に宮崎県延岡市で開催される「ドイツフェスタin延岡」の主催者として奮闘している名古屋大学生がいる。彼は延岡出身ではあるが、元々地元に貢献したいとは思っていなかった。

彼は何をきっかけに地元に貢献したいと思ったのか。そして、イベントを主催するほど強くその想いを抱いた理由は何なのか。それは、彼が幼少期から抱いていた根源的な疑問から始まっていた。

宇宙への興味から名古屋大学理工学部へ進学

岩本武士さんは1999年7月31日宮崎県生まれ。幼少の頃から「この世界があり、自分がいるのはなぜか」について考えていた。何もなくてもいいのに、この世界や自分がいるのはなぜか。

自分が存在している理由は地球があるから。だとしたら、地球が存在する「宇宙」という空間が生まれた理由を突き止めることで、存在意義が明らかになるのではないか。普段は友人達と仲良く学校生活を送っていたが、そういった疑問が頭から離れなかった。

そんな時、ブラックホールの研究をしている塾の先輩に出会った。彼は、岩本さんの目の前でオーロラを数式化して見せて、この世界に数式で表せないものは存在しないという話をしてくれた。

岩本さんはそこに、幼い頃から抱いていた「自分の存在意義」などの疑問に答える鍵があると直感した。「これだ」。

そう感じた岩本さんは、その先輩が通っていた名古屋大学理工学部の物理学科に進学することを決めた。現在は、世界をリードする教授2名を招き、名古屋大学で物理に関する自主ゼミを主催し、勉学に励んでいる。

名古屋大学に通う岩本さん。

成功してきたからこその挫折

岩本さんは、小学校・高校と野球部のキャプテンを務め、中学校では生徒会長をしつつ硬式野球クラブチームで全国大会にも出場した。高校までは、このように既存の組織に所属していたが、大学では自ら組織を立ち上げようと、YouTubeを通して学生により良い教育を届ける活動を始めた。

しかし、実績を思うようにあげられない上、メンバーに真正面から本気でぶつかっていくことができずに、組織は自然消滅してしまった。当時のことを岩本さんは次のように振り返る。

「自分の思いを強く言えば壊れてしまいそう、でも触れないと消えてしまうような状態だった」

活動を通して関わってくれた人達を幸せにしたかった岩本さんは、「自分は人を巻き込むことで周りを不幸にしてしまう」と思うようになった。それからは人との接触を避けたり、下を向いて人の後ろをついていくようになり、とうとう言葉を発することもできなくなってしまった。

「友達が旅行へ連れて行ってくれたけど、うまく話せなかった。旅行から帰ってきて(申し訳なく思い)誘ってくれた友達に謝ろうとしたけれど、3時間で3、4言しかしゃべれなかった。あの……、俺……、みたいな」

1人暮らしの部屋は汚れ、記憶が曖昧になってきた。大学の授業にはよく遅刻し、数学の授業ではきれいな円を描くのに30分かかるなど、授業にもついていけなくなった。当時の岩本さんは、まともに生活を送れる精神状態ではなくなっていた。

話せなくても受け入れられたのが地元だった

岩本さんは年末に宮崎県の実家に帰った。そこでは、自分がうまく話せないことはどうでも良く、岩本さんがそこにいるだけでいじってもらえたり、話せないことに対して周りは何も負担を感じたりしていない様子だった。

「自分が安心して存在できる場所、それが地元なのかな」

そう感じた岩本さんは、社会的・経済的にまだまだ改善の余地がある地元での居場所作りを目指すようになった。

「まちづくりとかじゃなくて、まちで区切るんじゃなくて、居場所づくり、その人がいるだけで素晴らしい、そう思えるような居場所をつくること。それが、自分が成し遂げたいこと」

そう思うようになった。

5月には北海道までヒッチハイクをした。

ブブリス・カリナさんとの出会い

ブブリス・カリナさんは、延岡市役所に勤めているドイツ人女性だ。

ブブリスさんは延岡市民の方々にドイツについて知ってもらうため、今まで様々なイベントを実施してきた。しかし、行政の職員という立場からほとんど1人で開催してきたため、満足できる規模や形で届けることが難しいこともあった。

そんなとき、岩本さんは当時通っていた地元の学習塾の塾長を通して、ブブリスさんのこと知った。彼女が延岡市のために活動しているのに、満足する形で実現できていないことにもどかしさを感じ、その思いを実現させたいと強く思った。

そして「延岡盛り上げ隊」という市民団体を結成し、行政・企業・市民が連携して延岡市を盛り上げるための活動を始めた。

4月にドイツフェスタの開催が決まり、初めてブブリスさんと会った時の写真。

延岡市は柔道が強い町であったこともあり、毎年ドイツの柔道代表選手団が合宿に訪れる。ベルリン合唱団なども訪れ、ドイツとの交流が多い町である。また、延岡市は東京オリンピック・パラリンピックのドイツのホストタウンとして登録されているため、行政としても力を入れていきたいと考えている。

そこで、延岡盛り上げ隊の最初の活動として「ドイツフェスタ」を開催することに決めた。ドイツフェスタを通して、延岡市民に海外・スポーツに興味をもってほしい。そして、延岡でもこういった大きな事ができるんだと感じてもらいたいと思った。

クラウドファンディングに懸けた想い

ドイツフェスタの開催にあたって、資金繰りは重要課題だ。出店企業の発注を運営側で一部負担している上、活動を進めるほどやりたいことが増えてくる。

市からの補助金に加え、80社もの企業から協賛を得ているが、まだまだ足りない。そこで、わらにもすがる思いでクラウドファンディングに挑戦した。岩本さんは言う。

「クラウドファンディングには賛否両論ある。けれども、支援者と僕たちはお金だけの関係ではなく、プロジェクトを一緒に進める仲間。そして延岡市民全員がプレイヤー。それが一番見える形がクラウドファンディングだと僕は思う」

今年8月7日に延岡盛り上げ隊のメンバーが集まり、ユニフォームを着て開いた飲み会の様子。

ただし、イベントの黒字化だけが成功の可否を決めるのではないと彼はいう。

「みんなが満足することが自分のものさし。だから、ドイツフェスタは単なるビジネスじゃない。プロジェクトを進める中で、関わってくれた色んな人達の最大価値、win-winの組織作りが難しい。だけど、話せば話すほど共感してくれる。一人ひとりの関係に合わせた居場所作りを実現させたい」

現在、ドイツフェスタの準備段階ではあるが、そのプロセス自体をすごく楽しんでいるという。

「運営のメンバーから、『ねえねえ、私、今が一番青春してる』って言われたのが最近一番嬉しかったな。みんなの笑顔とか、なかなか味わえるものじゃないから」

「自分の一番近くの人を支えたい」

岩本さんは今後も、延岡盛り上げ隊としてハロウィンやクリスマスなどのイベントを開催していくつもりだ。それらを通して、地元の人達に生きがいや、延岡市に対する誇りを持ってもらいたいと思っている。

延岡盛り上げ隊のスローガンは「50年後の未来をつくっていく」。

組織を結成して間もない頃は「人口2倍」などを目標にしていたが、町に住んでいる人が幸せになることが重要であるため、人口増加にこだわらない方向性へと目標を再考するつもりだ。

10年後には自然と自分たちがつくりたい町になっていることが理想的である。そして、人口減少社会の1つのモデルとして全国に提示したい。

岩本さんは現在、名古屋でのビジネスの基盤作りに注力し、経済的な自立を目指している。そして来年からは大学を休学し、自ら主催するゼミは続けながら、地元での活動に全力を投じるつもりだ。将来は延岡市で新規事業を立ち上げ、若者の雇用をつくりだしたいと考えている。

(おわり)

<「ドイツフェスタin延岡」開催!>

8月18日に延岡駅前複合施設エンクロスを、ドイツ本場のビール・料理・音楽・スポーツ・子どもの遊びなどでドイツ色に染めます!現地から取り寄せた地ビールでドイツ流乾杯!グリム童話の「おかしの家」づくり!ドイツで数多くのコンサート経験のある音楽隊による生演奏など!市役所や地元企業が全面協力でつくり上げます!

日時:2019年8月18日(日)10:00〜18:45
場所:延岡市駅前複合施設 encross-エンクロス
  (〒882-0053 宮崎県延岡市幸町3丁目3266番地5)
主催:延岡盛り上げ隊!
宮崎県延岡市を盛り上げるための団体です!学生主体で地元延岡市に今よりももっと〝生きがい〟〝雇用〟〝人口〟をもたらしたいという強い思いで活動しています!

【ステージブースタイムテーブル】
<午前の部>
10:00 物販開始(30分)
11:00 オープニングファンファーレ開始
MC小野錦さん登場
keikoダンススクールによるパフォーマンス
ドイツフェスタ開始のカウントダウン
市長TikTok挨拶!!
沖田愛加さん登場
のぼる君、チキ南蛮長、沖田愛加さん、市長によるドイツのお菓子まき
アレンジばんば(feat.DJ)
ドイツ流乾杯

<午後の部>
ドイツの柔道選手団登場!柔道show time!
→音楽に合わせて柔道技を繰り出します!
15:00 ドイツ音楽隊 山之口美玖さん(ピアノ)、宮田珠江さん(ソプラノ)
延岡学園柔道部(仮),少年柔道クラブ登場
お楽しみ抽選会
16:00 ユメタマゴLIVE 山本康大登場!
Rhythm Masterによるダンスパフォーマンス
18:45 終了
※このイベント中に、30分おきに不意にドイツ流乾杯をはじめるので、急に立ち上がって急に歌いだして参加して欲しいです!

【参考リンク】
クラウドファンディングCAMPFIRE:8/18限定!「ドイツフェスタin延岡」を開催し、延岡をドイツ一色にしたい!
Twitter:@Love_Nobeoka
Facebook:@nobeokalove
Instagram:@nobeoka.moriagetai 

読谷山洋司(よみやま ようじ)延岡市長 「ドイツフェスタin延岡」応援メッセージ

YouTube 岩本武士 延岡盛り上げ隊隊長 ドイツフェスタへの想い

ブブリスカリナさん ドイツフェスタに対する想い!!

めざましどようびお天気キャスター 沖田愛加さん ドイツフェスタin延岡への応援メッセージ

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