【連載 イタリア支局長だより】第3話 物価高のイタリア社会

倍以上の値段になったオリーブオイル

「お金がない」というのは、どこの国でも共通している。金銭的に潤っている人でも、極貧の生活を送っている人でも、口癖はみな「お金がない」。イタリアで2児の父親として日々労働に励む私は、慢性の金欠病。特に最近は、その言葉を口にすることが増えた。

というのもイタリアでは物価が高騰し、生活が苦しくなっているのだ。代表的な例はオリーブオイル。オリーブオイルには色々な種類があり値段も千差万別だが、私がディスカウントストアで購入しているものは、1リットル入りのボトルで3.99ユーロ(650円程度)だった。それが最近は倍以上の9.99ユーロになったから驚きだ。イタリア料理にとってオリーブオイルは日本食の醤油のような存在。それがこんなに高くなっては、ろくに料理も作ることができない。自炊をしている私にとっては大打撃である。

マクドナルドのセットが1600円

ウクライナ戦争前も物価は少しずつ高騰していたが、戦争が勃発してから一気に値段が跳ね上がった。ガス、電気、ガソリン、すべてが恐ろしく値上がりした。ガソリンは今、1リットル1.80ユーロ(290円程度)だ。幸い私の車は、イタリアで人気があるLPG(液化石油ガス)車なので、1リットル0.7ユーロ(110円程度)とガソリンよりは安く済んでいる。ただLPG車はガソリン車に比べて燃費が悪い。なので、子どもの送り迎え以外は、なるべく使わないようにしている。

さらに一般的な物価を例に挙げると、マクドナルドのセットメニューは、ポテトとドリンク付きで10ユーロ前後(1600円程度)。イタリア人の大好きなピザは、日本でいうLサイズの大きさで6~8ユーロ前後(970~1300円程度)。ワインはグラスで5ユーロ前後(800円程度)といったところである。いずれも数年前に比べて大幅に値上がりした。

ガソリンスタンドのコーヒーが小さな贅沢

問題は、物価は高騰しているのに、給与は横ばい状態だということだ。イタリア人の大体の平均収入は、1400~1800ユーロ程度(22万~29万程度)。大都市ならもっと多くもらっている人もいるだろうが、私の住むフォリーニョでは、月に1500ユーロを超えれば立派と言えるだろう。不動産価格も高騰している。私が住むアパートは郊外なので家賃が280ユーロ(4万5千円程度)だが、市内で借りようと思えば、同じ広さで最低でも400ユーロ(6万4千円程度)は必要だろう。

こんなことでは、ろくに床屋に行く金も残らない。だから最近は、バリカンで坊主頭にするようにしている。

このように、私は物価高に関わらず慢性の金欠病に悩まされているが、たまに「小さな贅沢」をすることがある。それは、私の仲の良い友人の働くガソリンスタンドでコーヒーを一杯飲むこと。わずか1ユーロ20セント(190円)で、お水まで出してくれて、楽しい世間話もできるんだから、贅沢はやり方次第だと実感する。

(イタリア フォリーニョ支局長 ジョー)

ガソリンスタンドの友人