【BOOK GUIDE】菅野典雄著『わが思い熱く』『モノハカンガエヨウ』『こころのぽけっと』(サガデザインシーズ)

菅野典雄前飯舘村長は昨年10月6期24年務めた村長を退任した。

本誌とは町長1期目からのお付き合いだが、不思議に思うことがあった。いつお会いしても初々しいのである。長く首長の座にあれば老獪さがにじみ出て、権力が民を睥睨する雰囲気が出てくるものだが、それがない。この三冊のどれを読んでも、菅野さんがどんな心構えで町政を行ってきたかよく分かる。

2011年の原子力発電所の事故は、飯舘村の運命を180度変えた。6年間の避難生活は住民に想像を超えるきびしい暮らしを強要したが、村の復興を陣頭指揮した菅野前村長にも大きな試練だった。

菅野さんは復興の旗印に「までいライフ」を提唱した。までぃな暮らしとは、手間ひま惜しまず、丁寧に、時間をかけて、つつましくという意味だが、この思想を村復活の根幹に据えたのである。

原発の事故は、手っ取り早く、時間をかけずに、効率よくエネルギーを生み出そうとした結果である。菅野さんは経済成長至上主義にノーを突き付けた首長なのである。

原発事故から10年、今年はコロナとオリンピックに翻弄されて忘れがちだが、菅野村長の著書と共に、われわれの暮らしを振り返って見るのは意味のないことではない。

(『かがり火』発行人・菅原歓一)

『わが思い熱く』3,500円
『モノハカンガエヨウ』2,500円
『こころのぽけっと』2,000円

発行:株式会社サガデザインシーズ
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※この記事は、地域づくり情報誌『かがり火』199号(2021年7月25日発行)掲載の内容に、若干の修正を加えたものです。